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となりの院長さん

第11回 松山動物病院 松山琢哉院長 制作日:2012年12月3日

長谷川孝寿院長

松山 琢哉(まつやま たくや)院長 1953年12月5日生(59歳) 熊本県出身

【出身大学】
酪農学園大学

【経歴】
2代続く獣医の家に生まれたものの、一度は違う道を志望し理科系(コンピュータ系)の大学へ通う。その後あらためて獣医を志すため中退し、酪農学園大学へ入学。卒業後、熊本動物病院にて約半年勤務。その後実家の松山動物病院へ。同じ獣医師である奥さまとの結婚を機に、病院を継ぎ同院院長となる。

【研究会】
九州画像診断研究会
鹿児島大学小動物臨床フォーラム
熊本県酪農大小動物臨床研究会

【役職・学会】
日本獣医循環器学会評議員
日本獣医画像診断学会理事
動物臨床医学会評議員
獣医麻酔外科学会評議員
獣医神経病学会理事
日本獣医3学会九州地区学術審査員
九州画像診断研究会顧問

【所属学会】
熊本県獣医師会
動物臨床医学会
日本獣医循環器学会
日本獣医画像診断学会
日本獣医麻酔外科学会
日本獣医神経病学会
日本超音波医学会
日本心エコー図学会

【診療対象】
診療対象は主に犬と猫。鳥も診療可能である。その他ハムスターなどは必要に応じて診療を行う。犬と猫の割合は6:4ほどで、昔に比べると猫の割合が随分増えたとのことである。

診療コンセプト

オープンな診療と情報の正確さ。

飼い主さんへのきめ細かい情報提供はもちろんのこと、他の病院で治療を受けることになった場合など、どこに行ってもその情報を利用できるように心がけている。

すべてをオープンにすることで、飼い主さんにより深く患者さんの状態を理解してもらい、安心して治療が受けられるような体制を取っている。

病院紹介

現在3代目の松山院長。地元の獣医として、地域密着型の診療を行っている。人通りや車通りが決して多くない住宅地の中にありながら、外来数は多い印象を受ける。入院数も「多い時は10匹以上いて、それだけで半日かかってしまうことも」あったという。現在は以前ほど多くないとの話だが、それでも入院室には多くの犬猫の姿がみえた。手術も、多い時はほぼ毎日行うそうだ。

病院のスタッフは現在獣医師2名(院長と奥さま)、AHT(動物看護師)4名、事務員2名、トリマー1名、清掃員1名。うち、AHTのひとりがカウンセラーも兼任している。

動物病院とは思えない洋館のような外観と、大きな窓のある明るい待合室。

準備室、処置室、手術室、X線室、入院室などに加え、トリミングルームも設けている。

院内には所狭しと機材が置かれており、エコーや内視鏡、歯科治療などの機材が多数揃っている。カラードプラ(エコー)を導入したのは、全国の民間施設(大学などを除いて)では2番目だったそうである。

CTも設置していたが、維持が難しく取材の半年ほど前に撤去してしまったとのことだ。

獣医師として大切にしていること

飼い主さんの目線に立って考える

診断結果と、飼い主さんの気持ちがつりあうことは難しく、「ただ診断結果だけを伝えてしまうと、嘆かれたり、がっかりされることもある。どちらを優先するのかが大事になってきている」という。

情報を正確に伝えることはもちろん必要だが、飼い主さんの気持ちを考えた上での説明や治療法の選択を行っている。

動物病院には珍しくペットロスなどの心のケアに力を入れているのも、飼い主さんの気持ちを大切にしているためだろう。3年ほど前から研修を受け、ペットロス準カウンセラーの資格を取得しているスタッフがケアにあたっている。資格取得のための費用は病院で負担し、人材の育成からしっかりと行っているのだ。

かかりつけの病院で心のケアまでしてもらえるというのは、飼い主さんにとっても非常に心強いのではないだろうか。

注力している診療科

院長と奥さまの獣医師ふたりで診療科を分担している。松山院長が循環器と整形、神経病、画像診断などを担当をし、奥さまは血液や腫瘍、軟部組織、歯科、眼科などを受け持つ。

その中でも、松山院長は循環器を、奥さまは血液や腫瘍に注力している。

豊富な医療知識で、長年地元のホームドクターとして診療を行っている。しかし、最近は2次診療として来院する患者さんが増えてきている。その分深い医療知識が求められるが、可能な限り地元で対応したいと診療にあたっている。より高度な珍しい症例などは大学病院を紹介し、連携して治療を行っている。

今後の展望

今後の展望をお伺いすると、「もう1回、良いCTを入れたいなと思っているんですが…」と松山院長は言う。

ただ、CTの導入はコストがかかり採算が合わないため、民間の施設では導入しているところは少ないのが現状である。大都市などで紹介症例が多数あれば別だが、地方では機械の維持も難しい。

さらにCT撮影時には3人ほどが作業のために拘束されてしまうなどの問題もあり、なかなか決断できずにいるというが、「画像診断が自分の好きな部分でもあるので、導入できればいいなと思っています」と語られた。

勉強会・学会について

外部の勉強会へスタッフ同士何人かで、自主的に参加をしているとのことである。

松山院長自身、多くの学会・研究会に関わっているため、少なくても年に1、2回は発表や講演を行っている。

学生時代~開業して

大学時代は体育会系で、山岳部とテニス部を掛け持ちしていたという松山院長。はじめの4年間は、ほぼ勉強しなかったそうである。

「一度、自分の研究室の単位を落としてすごく怒られた事があります」と苦笑する。

ただ最後の2年間は、それを取り戻すかのように、夜中までかかる研究にも真面目に取り組み、6年で卒業した。

一度、親の敷いたレールを外れて今までとは違う空気を吸ってみたいという理由で、理科系(コンピュータ系)の大学へ通った。中退後に一から勉強をし直して酪農学園大学へ入るまでに4年ほどかかったが、その時間も「無駄ではなかった」という。

代診時期は通常だと3年ほどのところ、半年と短い。その分研究会へ毎週のように参加することで新しい知識を得るよう努力し、次第に発表なども行うようになった。

開業にあたり、3代目ということもあって恵まれた環境にあったように思われる。しかし、先代の時は大動物から小動物に診療対象を変えてから間もない頃だったため、機材はほとんど揃っていなかったそうである。

病院を受け継いでからは、外来数を増やすことに努め、昼夜を問わず診療にあたった。なるべく良い環境で来院してもらうためにと機材を揃え、15年ほどかけて現在のような病院になったという。

独立を考えている獣医師へ向けて

早い段階での見極め

病院の規模や専門性など、どのような病院にしていくのかを早い段階で見極めて、それに合わせた学問を身につけていくことが重要だという。

動物病院の経営も、環境の変化が激しく見極めが難しいが、中途半端が一番良くない。

昔は不得意分野を作らないよう、浅くとも広い知識が求められていたのに対し、最近は専門病院として高度な医療を提供することで紹介を受けて診療を行っていく手もある。しかし専門分野の技術を習得してそれが認められるには最低5~6年はかかるため、早くから方向性を決めておく必要がある。

レベルの底上げ

最近では、ホームドクターとしての動物病院でも最低ラインのレベルを上げていくことが求められている。

松山動物病院でも2次診療の割合が増えてきているというのもその例だ。24時間診療の動物病院なども出てきており、今まで通りのホームドクターでは通用しない時代になっているのだ。

取材を終えて

院長のお話を伺って感じたのは、仕事熱心さと優しさを含んだ責任感。

多くの機材を入れることは、地方の動物病院では採算が取れるか難しいところですが、松山動物病院では、努力して外来数を増やすことで病院を充実させてきました。自力で一から機材を揃え、よりよい医療を提供できる環境を整えてきた松山院長。実は機械好きな一面もあり、今後もさらに機材や環境の充実が期待できます。

また、病院内に患者さんには見えない元気そうな犬や猫が居たので伺ったところ、犬猫合わせてなんと12匹ほどの「病院の子たち」が居るそう。「家の近くのノラ猫を捕まえて避妊手術をしたりしていたら居ついてしまって…」とのことでした。

開業当時の時間を問わない診療や、最近増えているという2次診療など、患者さんが来たらどうしても対応してしまうというお話からも、責任感の強さはもちろん、「放っておけない」やさしさがあるのでは、と感じました。

近くに居たらとても心強い松山院長。地元の飼い主さんに頼りにされているのも納得です。学会などでの役職の多さも、そういった人柄が関係しているのかもしれません。

松山動物病院