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となりの院長さん

第9回 三篠動物病院 長谷川孝寿院長 制作日:2012年8月30日

長谷川孝寿院長

長谷川 孝寿(はせがわ たかひさ) 院長 1966年10月16日生(46歳)広島県出身

【出身大学】
日本大学農獣医学部獣医学科卒

【代診時代-修業先】
開業までは紆余曲折あって、6年間と半年。
神奈川県鎌倉市大船、大塚動物病院で3年間。
神奈川県茅ケ崎市、高田犬猫病院で2年間。
東京都新宿区、牛込犬猫病院で同級生のヘルプとして1年半。

【開院時期】
1998年、実家で開業。

【診察対象】
犬猫が中心で、犬の中では2割が大型犬。野良猫ボランティアのサポートをしているので猫の割合は他の動物病院と比較しても多めになっている(通常7:3のところが6:4かそれ以上)。
広島では、野良猫には助成金がないので野良猫価格を設定して避妊や検査を行っているのが特徴的。
※呉市のみ22年より予算枠を設けて実施中。
犬猫の他にはうさぎ、フェレット、ハムスターなどが診療対象。うさぎの健康診断も実施している。

【役職・所属学会・所属協会・勉強会】

  • 日本獣医がん研究会(日本獣医がん学会)
  • 名前のない勉強会

    三篠動物病院では2種類の勉強会を実施中。一つはベテラン向けでもう一つはルーキー向け。ベテラン向けの勉強会には院長クラスが所属し、会の名前は無い。毎回講師に専門医を呼んで開催している。初期は6~7名程度のメンバーだったが、現在は30~40名の参加者があり、県外参加もあたりまえの状態になっている。規模の拡大に伴い、会場も広くなり、最近ではHACC、広島アニマルケア専門学校を間借りして勉強会を開催している。

  • ひよこ会

    ルーキー達の勉強会。三篠動物病院の代診獣医が始めたもので、こちらは小規模。病院の待合室で発表会形式で実施中。規模は小さいがこちらも毎回専門医や、ベテランを呼んで指導してもらっている。学会発表のシミュレーションと発表者が学んだことの確認とシェアが行える場になっている。

診察コンセプト ~正確な診断無くして確実な治療なし~

目指すのは「究極の町医者」
  1. 地域密着型の田舎獣医の芯はブレずに持ち続ける。
  2. オールラウンダーとして常に腕を磨くこと。
  3. 外科も内科も高いレベルで診れる設備導入と維持。

地域性なのか、年齢層のせいなのか、広島には獣医学部、獣医学科を持つ大学病院がないために、県内の獣医間で独自の連帯感があり、共に支え合い成長しようという非常に良い雰囲気がある。臨床に対する欲は深く地域で手術情報等を共有し、大きなオペ時には近隣施設の院長たちが代診の先生などを連れてやってくるということがここ10数年続いている。そんな地域の中で自分の役割をなんとなく意識しながら、先述した3つのコンセプトを持つ「究極の町医者」を目指していきたい。(長谷川院長)

院長写真

診察コンセプト ~正確な診断無くして確実な治療なし~

今回の取材を通して、一番長谷川院長の熱を感じたのがこの質問をした時だった。20年以上獣医をしている院長が一番大事にしているものだろう。

―― 獣医師として大事にしていることは何ですか?

「生きて喜んで、亡くなって泣いて」

代診時代から何があっても命一番を教え込まれたという長谷川院長は、命の重みの置き方が昔から変わっていない。住み込みで早朝でも深夜でも診療し続けた駆け出しの時代から、熱情だけはずっと持ち続けていると自負している。

それは院長になった今でも変わることなく、自分の病院でも熱い人だけが残って、その結果として、「(患者さんにその熱情が伝わり)安心感と感謝につながっていると感じる」と自信を持って話されたのが印象的だった。

院長写真

病院紹介

三篠動物病院は実家で開業ということもあって、工業地帯にあり、正直立地はあまり良くない。昔は周りにも動物病院がたくさんあったが、今は年齢などで廃業される先生方の方が多いような土地である。
それでも電話帳にも載せず、ホームページも持たず、これといった宣伝もせずに口コミだけでやってこれたのにはわけがある。 TV出演の話もあったが、変な露出をして対応できない患者さんが来ても申し訳ないという理由で断ったそうだ。あくまで地域密着型の田舎獣医というスタンスを維持し続けたから、広告をしなくても地域の中で成り立っているのだと推測できる。
飼い主ならそういった獣医にかかりたいし、15~20年の付き合いになる中で人柄というものは自然と伝わるのだろう。

病院のスタッフは獣医が2名、VTが8名。新人獣医は田舎なのでそもそも来る人が少なく、来たとしても院長が厳しいためなかなか続かないらしい。そんな獣医のサイクルは3~5年と平均より長いのが面白い。院長の熱にあてられるか、その人柄にハマれば長く務めることになるのだろう。VTにも保定や会計以外に専門性を持たせており、各検査の数値の意味するところや各種画像が読めるレベルにまで教育している。これにより日々の業務に必要性や意味がみつけられ、モチベーションの維持につなげている。

院長写真

院内設備はエコー、内視鏡、軟性内視鏡、麻酔ワークステーションなど。皮膚科は紹介を受ける方で、内視鏡もむかしはそうだったが、ここ最近は多くのクリニックが導入してあまり頼られることがなくなってきたらしい。

注力している診療科

「腫瘍科」

臨床的にはまだまだ足りないが、ペットの死因で一番多いのは腫瘍。その中で見つけるのが一番難しいのが消化管の腫瘍と考えているので、これを見つけることに注力している。

院長写真

注力している診療科

経営のことはあまり考えていない。最終的にはホスピスもいいかなと思っているが、現在やっている野良ネコの保護だったり、目の前のこと、地域の中で自分ができることを当たり前にやり続けていきたい。(長谷川院長)

院長写真

診察コンセプト ~正確な診断無くして確実な治療なし~

十分な基礎を

今後はより専門性が重要になり、またそれを追求できる時代になってくると思われますが、得てして開業したくなるのが獣医だとも思います。そうなる前に最低3年は十分な基礎を付ける時間に充ててください。言葉は悪いですが、大学の研修医程度の専門性は知識レベルであり、診察室や手術室の中で使えるものではありません。この時期に大事なのは良い師匠に出会えるかどうか、代診時代に入った病院がすべてだと思います。

院長写真
教えがいのあるルーキーに

熱意と言うか、情熱と言うか、臨床に対する熱さを燃やしてほしいんです。今の獣医師は教科書上の臨床が知識としてあって、現場でそれがなかなか活かされない状態の人が多いです。要するに頭は良いが引き出しの引き出し方が下手に見えるということです。
これまで泥臭くやってきた私の経験からすると、最近は打たれ弱い人が多いと感じます。また、私の周りには昔から犬猫がいたので、生命の生き死にに対する嗅覚というのは自然に身に付いていたが、最近の獣医に対してはそこも心配です。

優先順位を命に

代診時代は住み込みだったので、夜の急患対応はいくらでも対応させてもらえたがプライベートはありませんでした。そんなもんです。今の新人は自分の時間と条件にうるさすぎるんです。まずは教えてもらう立場だということをしっかり認識して、経験を積むべきなのではと、そう思います。(長谷川院長)

院長写真

診察コンセプト ~正確な診断無くして確実な治療なし~

自分が新人の獣医なら3年間教えてもらおう、と思える、妙に説得力のある長谷川院長でした。ネット上のクチコミで院長は厳しいと書かれてあったりしますが、正直で真面目な性格や診察が、そう映るのだと思えます。また、増患には興味がないとは言っていたものの、自分でできる以上のことを地域に還元したいという気持ちが伝わってきました。ご本人は否定されていましたが、ある程度の規模の施設を維持しつつ、教えがいのある新人を待っている、そんな風に見えました。

修業先を探されている新人獣医の方、三篠動物病院では代診の募集はかけていませんが、いかがでしょうか?濃い3年間になると思います。

三篠動物病院