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となりの院長さん

第5回 山陽動物医療センター 下田哲也院長

下田哲也院長外観外観

下田哲也院長  昭和28年12月28日生(56歳)

【出身大学】
鳥取大学農学部獣医学科、1978年、学士課程修了

【代診時代-修業先】
修業時代は岡山県津山市、春名動物病院にて4年間、続いて三重県伊賀市(旧上野市)南動物病院にて1年間研修医として勤める。

【開院時期】
1982年9月、岡山県赤磐市(旧赤磐郡)シモダ動物病院開設。
1997年9月、山陽動物医療センター開設(シモダ動物病院より移転)。

【研究分野】
研究者としては、1993~1998年の5年間、日本獣医畜産大学獣医学部、臨床病理学研究所の研修生として石田卓夫先生の指導のもと猫白血病ウィルス感染症の臨床病理学的研究に従事。
1998~2000年の2年間は日本大学大学院獣医学研究科研究生として臨床病理学研究室にて長谷川篤彦先生の指導のもと猫白血病ウィルス感染症の病態に関する研究に従事。

【診察対象】
犬猫が中心(約7割が犬)、大型犬の飼い主さんも多い。ウサギ、小鳥、フェレットの飼い主さんも対応している。エキゾチックは岡山市内のエキゾチック専門医(エキゾチック動物研究会 会長、中村先生)に紹介している。

【役職・所属学会・所属協会・勉強会】

  • (財)動物臨床医学研究所 理事
  • 動物臨床医学会 理事
  • 日本獣医がん学会 理事
  • 日本臨床血液学会 会員
  • 日本獣医学会 会員
  • (社)日本獣医師会 会員

山陽動物医療センター
http://www.sanyo-amc.jp/

診察コンセプト ~正確な診断無くして確実な治療なし~

近年、獣医療の分野は大きく進歩し、10年前までは対処療法的なアプローチしかできなかった症例にも、CTをはじめとする新しい獣医療機器の開発・導入により、治療及び施術前に高度な情報収集が可能となってきている。

その流れの中で下田院長が特に注意して若手に指導しているのは、高度医療が進歩した環境を利用しつつ、獣医療の本質を見失わないこと。具体的には次の3項目を肝に銘じろと指導している。

  1. 獣医師のエゴで診療をしない、自己満足に陥らない
    獣医という職業はどうしても「診断したい、治療したい」というエゴに走ってしまう。自分を出す前にまず飼い主さんの要望を汲み取る努力をしなくてはいけない。
  2. 常に飼い主さんの満足を考え、コミュニケーションをとる
    飼い主さんが何を求めているか?を自然な会話の中で汲み取らなくてはいけない。形式的に患者の状態を説明し、単に同意書に判子を貰うようなインフォームドコンセントに縛られるのではなく、飼い主さんの気持ちを汲み取りつつ、こちら(獣医師側)の気持ちを伝える努力をする。
  3. スタッフ全員の意識を統一し維持する
    前述した内容で、院内の獣医の意識を統一できたとしても、電話の応対、スタッフに冷たい態度やつまらない対応を受けると、それだけで飼い主さんは身構えてしまいコミュニケーションが取れなくなる。そうなると飼い主さんと獣医の間に原因不明の溝ができてしまい、関係の改善もできない。来院からお帰りまで、チームとして全てのスタッフが同じ意識で仕事に臨むようにしている。

実はこの3つ目には具体的な例がある。下田院長も理想的なケースと認めるその事例とは…、 2009年後半から2010年まで、山陽動物医療センターではCTの導入が進められており、病院の一部改築も必要となっていた。このため臨時駐車場を準備し、その運営に短期間でガードマンを雇用したところ、この方が飼い主さん達に非常に好評だった。

本人が動物好きというだけではなく、積極的に飼い主さんに声を掛け、コミュニケーションをとられていたことも高い評価の要因だろう。雇用期間中のある時、本人から病院宛に手紙が届いたことがあったそうだが、その文面に「当勤務を勤めている間、皆様の仲間の1人と思ってやっております」と綴られていたという。

飼い主さんに対する気持ちと、その意思統一が短期雇用のスタッフにも伝わり、実践してもらえた。このガードマンの方の気持ちは、院長からの言葉とは違った形でスタッフに影響したと考えられる。

病院紹介

山陽動物医療センターは2010年4月現在、獣医師8名、看護師5名、パート5名の計18名で運営している。獣医師の年齢層は27~31歳まで若手から中堅までが勤務している。人事面で特徴的なのが獣医師は男性のみで、それ以外は女性のみというところ。男女それぞれの組織の長に院長と奥様がおり、指示系統を確立させている。全体ミーティングは月に一回だが、組織別の打ち合わせはほぼ毎日のように行い情報共有をしている。

施設面では「動物医療センター」の名の通り、かなり高いレベルの先端医療を受けることが出来る。ただ、院長の考えとしては、高度医療を可能とする最先端医療機器を揃えることが目的ではなく、これまで飼い主さんに説明しきれなかった部分をCTの画像によって直感的にわかってもらえるようにすることがこのような最新医療機器導入の目的なのである。

診察室は3つあり、その全てがガラス張りとなっているため、処置中のペットの様子を待合室から見ることが出来る。診察室の奥には準備室と処置室が、その奥には獣医全員が入れる大型のオペ室があり、大型犬まで対応可能。これに加え入院施設も備えており、隔離施設もある。日常的な診療では、ほとんどの検査項目は院内で行え、結果は即日知ることが出来る。これに加え入院施設も備えており、隔離施設もある。

注力している診療科

下田院長自身、血液科、腫瘍とレントゲン画像診断を専門に行っており、副院長が皮膚科、医局長が超音波画像診断といった専門分野を持っており、複数の専門医が勤務することで病院としての診療レベルを引き上げている。

また、教育機関としての役割も担っている山陽動物医療センターでは、一次診療はオールマイティにこなせる獣医師の育成を目標に、それ以降はそれぞれの獣医師の適性と興味を踏まえ専門分野の力をつけてもらうよう環境を整えている。

参加している学会・勉強会は(役職・所属学会・所属協会・勉強会 参照)

小動物臨床研究会(現、動物臨床医学会)の分科会として発足した小動物臨床血液研究会を運営している。

動物臨床医学会年次大会(大阪)、獣医内科学アカデミー総会(東京)の中で研究会を年に2回開催しており、加えて岡山市では臨時セミナーを開催している。研究会では教育講演の講師や、勤務医の症例発表をサポートしている。また、動臨研カンファレンスに毎月参加し、さらに山陽動物医療センター月例勉強会を開催している。

今後の展望に関して スタッフ力の充実

これまで小動物臨床分野では修業後に開業というケースがほとんどだったが、今後はそういったケースに当てはまらない獣医師も多くなると思われる。

ある程度まで増えた動物病院の数が今後も順調に伸びるかどうかは不明である。一方で飼い主さん側から高度医療へのニーズも高まってきており、これに対応する専門医というのも必然的に出てくると思われる。

このような獣医療を取り巻く外部要因と内部要因を考え合わせると、飼い主さんの要望に応えるためには専門医の育成とそれを支える施設・設備の充実が必要で、今後、山陽動物医療センターでは従来通り「独立を支援しつつも個人の専門性や適性を最大限に発揮できる環境作り」に注力したいとまとめられた。

これから独立される獣医師にむけて 「中の上に特上ひとつ」

山陽動物医療センターでは勤務医にオールラウンダーであることを求めている。それは”飼い主さんの信頼を得る“のが臨床医の一つのゴールであり、どのようなケースに遭遇してもこれは求められるからである。

ただ、獣医学の多様化が進んでいる現在、ある程度のところまで対応できれば一人前である。”中の上”とはオールラウンダーとしてあらゆるケースに対応できる反面、自分では上の部分の対応が出来ないと言うことを知っていることでもある。

また一方で、「ひとつだけ特上」を持つように薦めているのは、自分の得意分野を持つことで飼い主さんの信頼を得られる。その結果、自信をもって診療にあたれ、診療に幅が出る。といった自分の中での相乗効果を得る方法だからである。

開業後の勤務医教育にも参考になるお話しでした。

山陽動物医療センター